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映画『ミッドナイト・スペシャル』 

映画

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あらすじ

ロイの幼い息子アルトンに備わった不思議な力。その神秘的な能力を狙って、カルト教団の魔の手が忍び寄る。追われる父と子は夜を徹して逃亡するが、追跡に国家権力がからみ、全国規模の指名手配へとエスカレートしていく。ロイは全てを犠牲にして、アルトンが究極の目標にたどり着くのを助ける決意をする……たとえそれが、何を意味するにせよ。

warnerbros.co.jpより

 

 

大人たちから見た「子供」の神聖

 

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本作には個人的な思いも反映されている。幼い息子を持つ親の気持ちだ。

脚本執筆中、当時1歳だった息子が熱性の痙攣を起こした。

その時悟ったんだ。“この子はこれからもケガしたり苦しんだりするだろう。そんな時私は同じ苦痛を味わうことができない。” 

“別の世界からこちらを見ることができても、こちらからその世界を見ることはできない”

ー『ミッドナイト・スペシャル』特典映像より

 

 本作では、前半部の重厚でリアルなトーンから一変して、「超人的な」能力を持つ息子アルヴィンが光ったり、物を破壊したりし始める。

 そこで展開される息子アルヴィンの「特殊」能力。それはジェフ・ニコルズ監督が幼い子供たちに見る「理解しがたさ」であり、同時に「神聖」そのものである。

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 しかし急に息子のアルヴィンが異様な姿で暴れ始めるのを見て、本作が何を言いたいのか見失う観客も多いかもしれない。

 そんな時にヒントになる存在が、最近注目を集める俳優、アダム・ドライバーである。

  

売れっ子アダム・ドライバーの大活躍

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 本作で、NSA職員を演じるアダム・ドライバー。

 彼は『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』(2015)で中二病的なキャラのカイロ・レンを演じて一躍有名となったばかりである。

   しかし急に売れっ子になった彼が次々に出演する作品には、どうも一種の共通性があるように思えてならない。

 

 つい最近では、『ハングリー・ハーツ』(2016)に出演。育児方針を巡って血みどろの夫婦喧嘩を重ねる夫を演じ、ヴェネツィア国際映画祭主演男優賞を受賞した。

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 生まれてきた息子を「インディゴ・チャイルド」(使命を持つ魂)と信じ、独自の方針で育てようとする妻を深く愛しながらも、現代医学に則って健康に育てたい夫の混乱を演じている。

 理想と理性の間で引き裂かれる夫を演じる彼は、本作では政府側の人間としてアルヴィンを追い詰めながらも、アルヴィンの神秘的な能力に魅了されていく人物である。

 

 考えてみれば『スターウォーズ』におけるカイロ・レンも、帝国軍(の残党)に属していながらも、共和国の英雄を両親に持ち、ジェダイの教える理想や、両親への愛を捨てきれぬキャラクターである。

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 自由と秩序、理性と理想、そして現実世界と神秘的世界の対立を演じ続けるアダム・ドライバー。

    そんな彼の出演作品と重ねて本作を見ると、アルヴィンの特殊能力を前にした彼の行動も、より味わい深いものがあるかもしれない。