2017-01-01から1年間の記事一覧

映画『静かなる復讐』 人間の正体不明性

あらすじ 服役中の夫の帰りを待つアナ。家族で経営するバーで嫌々働く彼女の元に、ある日見慣れぬ男性が現れる。 他の男たちと違って大声で下品な冗談も言わず、物静かで身なりも比較的きちんとしている。 どこかミステリアスなその男=ホセ(アントニオ・デ…

映画『沈黙』 個人主義に目覚める西欧 個人主義に苦しむ日本

神のあまりにも長く、不気味な沈黙。 自らの信仰が信者を救うどころか、よりいっそう人々を苦しめ、無残にいたぶり殺されていく絶望を前に、究極の神の不在を経験した神父が見出したもの。それは果たして真の神だったのだろうか。 私にはどうしてもそう思え…

映画『私はダニエルブレイク』

あらすじ イギリス北東部ニューカッスルで大工として働く59歳のダニエルブレイクは、心臓病を患い医者から仕事を止められる。国の援助を受けようとするが、複雑な制度が立ちふさがり、必要な援助を受けることができない。 悪戦苦闘するダニエルだったが、シ…

映画『この世界の片隅に』 スズさんの右手

この作品を観初めて数分間、正直私は気分がよくなかった。 戦中の日本の過酷な生活、男女差別、不気味な戦争経済が広がっているにもかかわらず、その風景が、あまりにものどかで、都合よく加工されたものに思えてしまった。 「常にボーっと」している可愛ら…

絵画 『羊の剪毛』

上野にある国立西洋美術館に一点、心惹かれてならない作品がある。 常設点も終わりに近い近現代美術の作品群の手前。暖色に照らされた、19–20世紀の美術作品を並べる部屋の中に、その作品はある。 『羊の剪毛』と銘打たれたその作品は、同じ空間に並ぶエキゾ…

ジブリ作品『もののけ姫』 「祟り神」が象徴するものとは

ジブリ作品とドロドロの怪物たち 宮崎駿作品にはしばしば、ドロドロした気味の悪い怪物が現れる。 『風の谷のナウシカ』の巨神兵や『千と千尋の神隠し』の暴走するカオナシなど、挙げればきりがないが、核兵器の脅威や巨大化し続ける胃袋(欲望)など、いず…

映画『ミッドナイト・スペシャル』 

あらすじ ロイの幼い息子アルトンに備わった不思議な力。その神秘的な能力を狙って、カルト教団の魔の手が忍び寄る。追われる父と子は夜を徹して逃亡するが、追跡に国家権力がからみ、全国規模の指名手配へとエスカレートしていく。ロイは全てを犠牲にして、…

ピクサー作品『ウォーリー』 管理社会へのブラックで優しいメッセージ

あらすじ 29世紀の地球。700年もの間、たった独りでゴミ処理を続けているロボット【ウォーリー】。彼の夢は、いつか誰かと、手をつなぐこと。ある日、そんなウォーリーの前に、真っ白に輝くロボット【イヴ】が現れる。一目惚れしてしまったウォーリーが、イ…