2019-01-01から1年間の記事一覧

小説 『永い言い訳』 に触れて

西川美和さんの作品を読んでいると、善い小説の真の効力を思い知らされる。 それは読者に「主観」を与えてくれることであると思う。 小説なのだから当たり前ではないか、と一瞬思いはする。 とは言っても、私たちの内面は日頃そこまで豊かに語らないし、仮に…

モンテーニュ2

あらかじめ死を考えておくことは、自由を考えることである。 死を学んだ者は、奴隷であることを忘れた者である。 ーモンテーニュ 堀田善衛『ミッシェル 城館の人より』 彼のこの言葉を聞いて、不思議と目の前に広がる光景が輝いては来ないだろうか。 しかし…

キャベツについて

最近たくさんキャベツを食べている。毎日ひたすら食べている。シャキシャキとあらゆる食事の味を引き立てるキャベツは、甘み、風味、食感、栄養、そのどれをとってもポテンシャルは無限である。 さらに言えばキャベツは消化にも優しい。消化によって体内の血…

モンテーニュ1

自分の存在を正しく享受することを知ることは、ほとんど神に近い絶対の完成である。 我々は自分の境遇を享受することを知らないために、他人の境遇を求め、自分の内部の状態を知らないために、われわれの外へ出ようとする。 だが、竹馬に乗っても何にもなら…

ゴヤ 『聖イシードロの巡礼』

何の喜悦も感じられず、また暴動様の怒りもない。祭りの日の巡礼とならば、共通の目的がありそうなものなのに、それもない。 人間は無意味に口をぱくぱくやり、目の玉をぎょろつかせて荒野を目的なく彷徨する集団に過ぎない。 人生もまた生から死への無意味…

虚構について 『サピエンス全史』より

人類の祖先ホモ・サピエンスは、ある時期地球上に存在したもう1つの人類、ネアンデールタール人よりも背丈筋力、脳容量において劣っていたそうである。 個体同士の能力におけるネアンデールタール人の優越にも関わらず、我らが祖先たるサピエンスはいかにし…

ヨーダ について

ダースベイダーとルーク・スカイウォーカーの戦いを観て、私たちは当然のようにルークを応援する。ベイダーは秩序を、ルークは生命の豊かさを体現している。 体そのものまでもが機械化した、コテコテの秩序の化身たるベイダー。彼はなぜ「悪」として倒されな…