2020-01-01から1年間の記事一覧

正月について

年の「終わり」と「初まり」を見守る時、人はそこに人生そのものを改めて意識し、その奥に少しだけ、死を垣間見る。 子供達はいつも以上に目を輝かせるオトナたちに小首をかしげながら、やがてはまどろみ夢の世界へ。 その驚きに満ちた毎日に、年越しという…

ジャン・クリストフ 1

「ああ!伯父さん」と彼は言った。「僕は苦しいんだ!」 「伯父さん、どうしたらいいんだろう?僕は望みを持った、そしてたたかった。だが、一年たっても、前と同じところにいるんです。それどころじゃない!あと戻りしちまったんです。僕はなんの役にも立た…

モンテーニュ3

よく見られることであるが、どんなに豊穣で肥沃な土地でも、遊ばせておくと様々な無益な雑草が生い茂る。 これを役に立てるためには、われわれの役に立つような何かの種子を播いてやらなければならない。 (…) 精神が何か自分を束縛し抑制する主題を提供さ…

許す、という報復

相手に怒りを感じる時、大抵の場合、そいつを張り倒すことは許されない。 言葉による攻撃?その後のことを考えれば損に決まってる。 相手との関係性の修復は、その一瞬の破壊の何倍手間なことだろう。修復なしに相手が敵になればもっと面倒なのだし。 要する…

予行演習

この不安な日々を予行演習だと思えばいい。みんながいずれ通る道、その少し早過ぎる予行演習だと。 日常が徐々に様変わりして、出来ることも段々と限られてくる。 また日常に戻れるかもしれないが、もしかしたら、もう戻れないかもしれない。 日常を取り戻す…

コイナーさんについて

コイナーさんは客としてもてなされるとき、あてがわれた部屋は最初の状態のままにしておいた。 個人がその環境に自分のしるしを押すのは、つまらないことだと思っていたからだ。 逆にコイナーさんは、自分の存在を、泊めてもらう部屋に合うように変えようと…

模様替えの怪

都内での引越しが多い。家賃が高いから、その五千円から一万円の間に凝縮されている細々とした条件を吟味しなければならない。 何よりも広さ、木造が鉄筋コンクリートか、窓はいくつあるか、駅までの距離、周囲の景色、図書館やスーパーの有無といった絶対条…